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旬楽館女将:        
高橋和子(たかはしかずこ)

98年下関市内に開いた「旬楽館」は50席、スタッフも9人。 夫(66)も造船の仕事を定年後 も続け、国内外を飛び回る。

■「高橋和子」のある一日■
   
6時半: 起床、朝食
8時半: 出勤
9時  :  1日の予定を確認し、調理場を手伝う
11時 : 昼の営業
15時 : 休憩、スタッフと食事。
宣伝のための外回りも
17時 : 夜の営業
22時半: 閉店、帰宅
1時  : 就寝
   
   
   
   
   


それは、起業を志す女性向けに、山口県が開いた講座だった。
何かの役に立てば、と申し込み、事業計画の書き方や会社設立の手続きを学んだ。ケーキ屋、弁当の宅配など起業の実体験を話す女性の中には年配の人もいて、はつらつと語る姿が、すてきだった。


 「私にもできそう、と思ってしまった。 引っ込んで孫のお守りをするのは早いと」


やるなら飲食店、それも「フク」と決めた。
地元、下関の名物という以上に、ちょっとした縁があるのだ。55歳まで勤めたのは、関門海峡のフェリー会社だった。
課長の肩書で経理から営業、企画までこなしていた。 定年の少し前、新船を造る話が持ち上がると「フク」型の船にと提案。技術上の問題で実現しなかったが、船体には大きなフグが描かれ、船上でフグ料理を出すクルージングの企画はヒットした。


 「その時、疑問を感じたんです。フクってなぜ高いの?若者や女性ひとりでも、気軽に食べられたらいいのに」  調理ではなく、自分が行きたいと思える店の経営をしてみたい。


「やりなさいよ」と励まし、資金面でも支えてくれる友人2人を役員に迎えて会社を作った。
唐戸市場の近くに店舗を見つけ、しにせ料亭が幅を利かせる世界に、飛び込んだ。
値の張るトラフグ以外に、おいしく安く工夫できる料理はあるはず。 マフグやカナトフグも素材に、3800円からのコースを編み出した。
洋風も積極的に取り入れる、通りにメニューを出し、店内の様子が見える小窓を作って、店に入りやすくもした。  


そんな門外漢の発送が調理人とぶつかったこともある。自らの接客の至らなさを悔やんだりもした。
だが、たくさんある不安の種は、だれかの喜ぶ顔で帳消しになる。
「面白いことを考えて、人を楽しませたい」という思いは、フェリーをフグに見立てたころと変わらない。
 
女性一人でも気楽に訪れて頂けるような店づくりを目指しています。

最近も、旅行カバンを抱えた若い女性客が就職活動中と知り、履歴書を預かった。
 「よし、何とかしましょうって、そういう瞬間が幸せ」
敷居の低い店にという目標は果たした。 いま心に期すのは、フグを描いたフェリーが走る海峡の見える所に、店を出すことだ。


(朝日新聞記事より/筆:佐藤 美千代)